音楽理論その4

佐渡島の次平

コード進行の基本


C→F→G7→C


と言われてますが、この形に決まるまで100年位かかったそうです。 和音で伴奏をしてその上にメロディーを乗せる形になる以前は旋法のみでした。 教会旋法と言う複数のメロディーが重なり合って音楽を作っていたんでしょう。 複旋律の中で、フーガ(輪唱)が最も発展した形です。

コード進行の最小単位は。


G7→C


と言う形です。 クラシックではカデンツ、英語ではケーデンス、日本語では終止形と言います。 ※今ではこれが最小単位と決まってますが、この形に決まるまでにはF→Cと言う形(アーメン終止と言います)もあったようです。 今でもオーソドックスなブルース等にはこの形が残っています。

G7は属七の和音と言って、G,B,D,Fと言う構成音の内B,Fの減5度音程を含んでいます。 この減5度音程は不安定な響きで、外に広がるか、内に狭まって安定した響きに落ち着こうとする性質があります。

B,Fが半音ずつ広がって、E,Cの6度音程になるか、半音ずつ狭まって、C,Eの3度音程に落ち着こうとする訳です。 ベース音はG音→C音と5度下行します。

自然界の音には倍音が含まれていて(もちろん楽器にも)、1音出しただけでも2倍音、3倍音、・・・・倍音と何倍もの倍音が含まれています。 その倍音の中にある3倍音が重要です。

例えばベースでC音を引くと、C音だけでなく3倍音のG音が鳴っているんです。 このG音を感じるため、人は無意識に5度下の音を欲求するそうです。 そのため、5度下のF音を次に弾くと安心した気分になるそうです。 (F音の3倍音がC音になる)

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人間の会話の中でも、「これは、◯◯ですか?」の問いかけに対して肯定する時の「はい」の音程は、5度下になってるそうです。 「か?」の音程に対して「うーん」と言う時の曖昧な返事は3度下位のようで、質問に対しての解決がつかないので、聞いたほうは満足できません。

G7→Cのコード進行を、ドミナントの不安定な響きをトニックの安定した響きで解決したと言います。 これを「完全終止」と言い、G7→Em7のように3度下のトニックの代理和音に進行する事を「偽終止」(ぎしゅうし)と言います。

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ベース音は5度下行すると最も自然な動きに感じるんです。 5度下行は4度上行すると言っても同じ事なので、ジャズでは4度進行するコード進行が基本です。


G7→C


この進行が5度下行、4度上行のドミナント・モーションと言います。 G7コードを属七の和音、ドミナント・コードと言います。 Cコードが主和音、トニックと言います(ハ長調の場合)。

4度進行するのが一番自然に聞こえるので、基本のコード進行である


C→F→G7→C


を、C→Dm7→G7→C


と変更します。 Fコードは(副属七)サブドミナント・コードと言います。 Dm7はFコードと構成音が似ているので、サブドミナントの代理和音です。 代理和音のDm7に変更する事で、


Dm7→G7→C


と、D音→G音→C音と4度進行にできます。


このDm7→G7を特別に、2-5(ツー・ファイブ)と言います。 Dm7はCのスケール上にできる2度の和音で、G7は5度の和音なので、(2度−5度)で、ツー・ファイブと呼びます。 ジャズでは、最も基本的なコード進行です。

このツー・ファイブも元の形は一番基本の終止形である、G7→Cから派生したコード進行です。 ドミナントである、G7をDm7→G7と言うツー・ファイブに分割して変化を付けたものと考えられます。 つまり、ドミナント・コードはツー・ファイブに分割できる訳です。

Dm7に4度進行するドミナントを考えると、A7となります。 このA7もツー・ファイブに分割できるので、Em7→A7とできて結局、


Em7→A7→ Dm7→G7→C


いわゆる循環コードと言われる、よく使われるコード進行ができます。 ここで大事な点は、ツー・ファイブの進行は元々ドミナント・コード1つだったと言う点です。 Em7→A7は元はA7だったし、Dm7→G7の元の形はG7コードだったと言う事です。

このため、(2−5)ツー・ファイブと言うコード進行は、コードは2つあっても機能的には1つのドミナント・コードだと考えられます。 つまり、必ず2つがセットになってないといけない訳です。

こんな理由から、Dm7→G7や、Em7→A7がツー・ファイブだと言うためには、2度の□m7コードが奇数小節にないと、ツー・ファイブとは言えないのです。 例えば、


|C|Dm7|G7|C|


と言うコード進行が4小節あった場合は、Dm7が2小節目にあるので、4度進行ではあっても、Dm7→G7がツー・ファイブとは言えないのです。 Dm7のように2度m7が偶数小節になる場合は、必ず1小節の中に2つのコードを入れて |Dm7→G7|と言う形にしないと、ツー・ファイブとは言えないんです。

音楽は、強弱のリズムから成り立っていますから、奇数小節が強、偶数小節が弱と言う2小節が最小単位です。


|Dm7|G7|C||

|C|Dm7→G7|C||


終わりのCがエンディングとすると、曲の本体はその前の2小節です。 Dm7を1小節目にするか、2小節目ならDm7→G7とすれば、Dm7→G7がツー・ファイブと言えるのです。 ツー・ファイブである、Dm7→G7はいつでもG7コード1つに戻す事ができます。 と言うより、戻せないといけないんです。 下のようにすると、


|C→Dm7|G7|C||


Dm7とG7の間に小節線が入っているために、Dm7→G7を1つのG7に戻せませんね。 (|C→G7|G7|C||としたんでは、G7が2つになってしまいます) そのため、上のような進行ではいくらDm7→G7と並んでいても、ツー・ファイブとは言えず、Dm7とG7は独立したコードとなってしまいます。 こう言うコード進行を作ると、小節線の位置が曖昧になってしまいます。

どんな曲を聞いても、人は自然に小節の頭(始まり)を自然に感じて、手拍子を打ちますね。 しかし、そのためには自然に小節線の位置を感じられるコード進行にする必要があるのです。

※1小節内に4つコードを入れる場合は、 |Em7→A7→Dm7→G7|とします。 1拍目、3拍目が強拍です。 G7のようなドミナント・コードは減5度の不安定な響きを持っているので、弱拍に置くのが原則です。

ハ長調では、Dm7,G7どちらのコードもツー・ファイブになろうと、独立したコードであろうと、ハ長調のスケールが当てはまるので、スケール(音階)的には問題ありませんが、Em7→A7の場合は、ツー・ファイブになるかならないかで当てはまるスケールが変わってきます。

Em7→A7がツー・ファイブであれば、Em7にはドリアン・スケールを使うんですが(ツー・ファイブの2度m7にはいつもドリアン・スケールを使う)、ツー・ファイブにならない時は、ハ長調のスケールがそのまま使われて、フリジアン・スケールと言うスケールになります。 ところが、ツー・ファイブのEm7にはドリアン・スケールが使われるので、これはニ長調のスケールになります。 使うスケールが違ってきます。 スケールが変われば曲の雰囲気も変わります。